Agri-Entrepreneur Summit 2026に登壇してきました

2026年3月12日、東京・丸の内のみずほ丸の内タワーで開催された「Agri-Entrepreneur Summit 2026」に登壇してきました。

日本初の「農業起業家サミット」。YUIME株式会社が主催し、みずほ銀行・みずほ証券が特別協力、農林水産省が後援という、農業×ファイナンスの一大イベントです。全国から500名の農業関係者、金融機関、投資家、企業関係者が集まりました。

「コメ農家は事業拡大の絶好の機会をファイナンスで掴め!」

私が登壇したのは、緊急特別座談会。テーマは「コメ農家は事業拡大の絶好の機会を『ファイナンス』で掴め!」

モデレーターは株式会社ヤマタネの河原田岩夫社長。創業100年を超える米卸の老舗企業のトップです。

ご一緒した登壇者の皆さんも、本当にすごい方ばかりでした。埼玉を拠点に350ヘクタールの大規模経営を行う中森農産の中森剛志さん、滋賀県で300ヘクタールを経営するイカリファームの井狩篤士さん、東大卒で創業1年強にして4県120ヘクタール+NYへの輸出を実現しているRICE DAOの丸山壮さん、宮崎県で田んぼの収益最大化に挑む甲斐ファームの甲斐尚さん。

沖縄県内トップの米農家とはいえ、経営面積34ヘクタール。全国から集まった数百ヘクタール規模の経営者たちと並べば、決して大きいとは言えません。この場に自分が呼ばれた意味は何なのか——正直、登壇前はずっと自問自答していました。

「作る人」と「売る人」の間で

振り返ってみると、あの座談会で私だけが少し違うポジションにいたのかもしれません。

他の登壇者の皆さんは、全員が「生産者」です。数百ヘクタールの大規模経営、エクイティファイナンスでの資金調達、海外輸出——。農業を「事業拡大のチャンス」として捉え、攻めの姿勢で挑んでいる方たちでした。

私は農家でもありますが、米屋です。60年にわたって、玄米を仕入れ、精米してお客さんに届けてきた。いわば「川下」の人間です。10年前に農業生産法人みやぎ米穀を立ち上げて、自分たちでも米を作るようになった。つまり、「売る」と「作る」の両方を自分でやっている。

加えて、私はお米マイスターの資格を持っています。お米マイスターとは、品種の特性や産地の違い、ブレンドの技術といったお米の専門知識を消費者にわかりやすく届けること、そして炊飯の技術——水加減や浸漬時間、炊き方ひとつでお米の味はまるで変わります——を伝えることを使命とする資格です。生産の現場を知り、精米・品質管理の技術を持ち、お米の美味しさを最大限に引き出して消費者に届けるところまでを自分でやっている。お米の生産から販売、そして食卓までを一貫して手がけ、専門知識も持ち合わせた「お米のプロフェッショナル」——こういう存在は、実は日本でもかなり稀です。

その視点が、もしかしたらこの場に必要とされたのかもしれない。生産だけでも、流通だけでもなく、バリューチェーンの全体を知っている人間の目線。

なぜ農業を始めたのか——動機が違う

もう一つ、私自身の話をさせてください。

座談会では、数百ヘクタール規模の経営や、エクイティでの大型調達、海外輸出といった、農業の可能性を切り拓く話が多く交わされました。

でも、私たちが農業を始めた理由は少し違います。

「このままでは20年で石垣島の米農家がいなくなる」。

10年前にそういう試算がされていることを知り、米屋が米農家になった。拡大ではなく、消滅を防ぐために始めた農業です。

石垣島の米づくりのこと

座談会では、石垣島の米農業の現状についてお話しさせていただきました。

10年前に約200名いた米農家は、今は約70名。平均年齢は70代後半です。島全体の水田面積は約300ヘクタール。私たちは34ヘクタール・二期作で経営しており、沖縄県トップの米農家になりました。

積極的に拡大しようと思ったわけではないんです。60年間、米屋として地域の農家さんと信頼関係を築いてきた。その結果、「宮城さんにお願いしたい」と農地が集まってきた。耕作放棄地を一枚ずつ再生して、今に至ります。

カンムリワシ(天然記念物、島に約100羽)と米農家、どちらが先にいなくなるか——そんな話もしました。冗談みたいですが、割と本気の問題です。

石垣島は「日本の農村の未来」かもしれない

石垣島は本土から約2,000km離れた離島です。1万ヘクタールの集約なんて物理的にあり得ない。物流コストは本土の1.2〜1.5倍。金融機関の選択肢も限られている。

でも、高齢化、後継者不足、農地の流動化——これらは石垣島だけの問題ではありません。本土の農村でもこれから確実に起きることが、石垣島ではすでに進行している。ある意味、日本の農業の未来の縮図です。

だからこそ、エクイティだけが正解ではない。耕作放棄地を1枚ずつ再生し、島の食料供給を守ること。それも立派なファイナンスの課題だと思っています。

サミット全体の空気

サミット全体を通じて感じたのは、農業が「家業」から「事業」へ、そして「投資対象」へと変わりつつあるということ。

エクイティファイナンス(株式出資)で資金調達をする農業法人、AIやデジタルツインを活用した大規模農場経営、植物工場から世界に日本の農産物を届ける企業——。自分たちが田んぼで泥にまみれている世界とは、まるで違うスケール感の話も飛び交いました。

でも、どの登壇者にも共通していたのは「なぜ農業をやるのか」という使命感。ファイナンスの技術よりも、経営者の志に投資家は惹かれる——そんなメッセージが印象的でした。

1万ヘクタールの大規模化も正解、34ヘクタールの耕作放棄地再生も正解。問題は、日本の農業経営体の大半が、どちらの選択肢も取れていないこと。その「グラデーション」の中で、それぞれの正解を見つけていくしかない。

田んぼの原風景を守る人たち

サミットでは嬉しい出会いもありました。俳優・タレントのジローラモさんが飛び入りで登壇され、地元農家のコミュニティと一緒に稲作をされていることを知りました。オーナー制度や援農の仕組み、農業体験を通じた地域活性化など、素晴らしい取り組みをされています。最後には記念写真も一緒に撮らせていただきました。

規模も国も立場も違うけれど、田んぼの原風景を守りたいという想いは同じ。こうした動きが世界各地にあるんだなと、改めて実感しました。

Agri-Entrepreneur Summit 2026 登壇者との記念写真
座談会の登壇メンバーとジローラモさんとの記念写真

石垣島から東京へ、そしてまた田んぼへ

日本を代表する農業経営者や金融のプロフェッショナルたちと肩を並べて議論できたことは、本当に貴重な経験でした。

でも、石垣島に帰ればまた田んぼです。日本一早い新米を届けるために、今日もコツコツやっていきます。

石垣島の米を守る。それが、みやぎ米屋の使命です。


Presented by YUIME / Supported by みずほ銀行・みずほ証券 / Partner 農林中央金庫

TOMOKAZU

TOMOKAZU

お米マイスター、農産物検査員、農業用ドローンオペレーター。 お米のプロとして、お客様にとって有益なお米情報を発信しています。

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