お米は本当に太るのか?

数年前ブームになった「糖質制限ダイエット」の影響か、「お米は糖質を多く含んでいるので、食べたら太る」という俗説がまことしやかに広がっています。

ですが、それは大きな誤解です。

アメリカの臨床栄養学でも実証されていますが、お米は太りにくく、人間が活動する上で必要な栄養素が豊富に含まれていることが分かっています。お米に含まれる糖質を摂ると血糖値が上がり、体内では糖分を脂質に変えるインスリンを分泌してお米が分解されるので、「お米=太りやすい」という認識が広がっています。

京都大学大学院人間環境学研究科の森谷敏夫教授は、人間生活において炭水化物を制限することについて警鐘を鳴らしています。

糖質を制限すると、確かに体重は減ります。数年前、友人たちとダイエット勝負をして、4日間糖質をゼロにして、4㎏減らしたことがあります。ですが、体脂肪は全く変わりませんでした。

糖質制限で減ったのは、脂肪では無く、「筋肉」と「水」だからです。

糖質制限ダイエットで減るのは、身体の「筋肉」と「水分」

身体の中に糖質が足りなくなると、筋肉が自分自身を分解してブドウ糖を作ります。これを繰り返していくと、脂肪は減らずに筋肉だけが削られて、結果的に基礎代謝が低下。なんと逆に太りやすい体質になっていきます。BMIは適正でも、筋肉が落ちて体脂肪率が高い、いわゆる「隠れ肥満」になります。

また、人間の脳は、基本的に糖質だけをエネルギー源とし、1日に約400kcalを消費します。

一方、筋肉は体の4割以上を占めています。安静時の基礎代謝を1600kcalとした場合、少なくとも半分以上、800kcal以上の糖質が筋肉で使われます。この代謝を維持するために、私たちの肝臓と筋肉と脂肪細胞には、グリコーゲンに水が引っ付いてとどまっています。だから人間の体はみずみずしく、そして重いのです。水分は身体の55%~60%を占めます。

糖質を減らせば、身体は、肝臓や筋肉、脂肪に4倍の水と結合しているグリコーゲンを分解してブドウ糖に変換します。その際、グリコーゲンに引っ付いていた水分が体から排出されるので一時的に体重が減ります。ただし、翌日に炭水化物を食べれば、また体重が増えます。糖質を摂れば、減ったグリコーゲンを合成するために4倍の水が体に貯蔵され、貯蔵された水の重さ分、体重は増えます。

教授はこれを「水の泡ダイエット」と仰っています。

脳にはエネルギー=糖が必要

人間の脳は1日に約400kcalを消費する大食漢。一方、ネズミはほとんど脳を使ってのエネルギーは消費しません。
ネズミへの実験で、「大量の糖をネズミに与えたら、太って糖尿病になったから、人間も炭水化物を制限しなければならない!」
と誰かが言ったとか言ってないとかで始まった「糖質制限ダイエット」。

アメリカでは糖質制限ダイエットは既に時代遅れです。実際に、糖質制限ダイエットによって死者が出ており、人間が生活する上で、糖質を限りなく制限するのは大変危険です。ダイエットで重要なのはPFCバランスです。(P=タンパク質 F=脂肪 C=炭水化物)

もし、あなたが行っているジムのトレーナーが「炭水化物を摂らないでください」と言っていたら、そのジムは辞めた方が良いです。今時、そんなコトを言ってるトレーナーはいないでしょうが 笑

ダイエットの基礎は、PFCバランスを意識し、消費カロリーを超えないカロリーをきちんと摂取しながら、基礎代謝を高めるため(太りにくい身体を作るため)の筋トレに尽きます。

少し話しが逸れてしまいました。糖質の重要性について話を戻しましょう。

人間の脳は24時間エネルギー=糖質を使っているので、睡眠後目覚めた朝は低血糖状態です。そこで朝食を抜くと、さらに血糖値が下がって体は一気に飢餓モードとなり、できるだけエネルギーを使わない省エネ状態にスイッチします。

その状態で昼食を食べると、身体が「今だ!蓄えろ」モードになり、摂取した脂肪分は、体内でそのまま脂肪として蓄えられます。一方で、朝の低血糖時には、脳のために血糖値を上げるホルモンがたくさん放出されるので、血管が収縮し、血圧が上がります。

低血糖で、筋肉のエネルギーとなる遊離脂肪酸が増え、血液はネバネバ状態。グリコーゲンも底をついて脱水状態、血中水分も少ない。結果、血管が詰まって脳卒中や心筋梗塞のリスクが飛躍的に高まります。

あなたはそれでも糖質を制限したいですか?

明治以降の肥満化は、炭水化物=糖質が引き起こしたものではなく、食の欧米化によって、人々が脂質の多い食事を摂る機会が増えたからです。事実、日本人は弥生時代からずっとお米を食べ続けてきましたが、近代まで、肥満の問題はほとんど無かったと言われています。

ひとことで糖質と言っても、砂糖などに含まれる単糖類、乳製品などに含まれる少糖類、炭水化物に含まれる多糖類と、大きく3つに分けられます。ご飯は多糖類の「でんぷん」が主成分で、粒食であるため噛む回数が多くなり、消化吸収や血糖値の上昇が緩やかという特徴があります。
加えて、ご飯は1gあたり4kcalしか無い上に、腹持ちが良く、脳に満足感と幸福感を与えてくれるスーパーフードです。

笑顔のそばには いつもご飯

美味しいご飯を食べると、人は自然と笑顔がこぼれます。目を大きく開いて「このご飯、美味しい!」と言ったことが誰しもあるはずです。
日本人は、はるか昔からその満足感と幸福感を脳が知っています。美味しいご飯で満腹感を味わえば、適量のおかずでも満足できるものです。

一方、ご飯を抜いた食事は、血糖値が一定の高さまで上がらず、満腹中枢が刺激されにくいため、満腹感を感じるのに時間がかかってしまいます。
なかなか満腹感が得られず、ついつい食べ過ぎてしまうことになります。

ご飯を良く噛んで、ゆっくり食べることで満腹感が得やすくなり、食べる量が抑えられる、つまり摂取カロリーを抑えることができ、太りにくい体になっていくのです。
なにより、お米にはタンパク質やビタミンをはじめ、様々な栄養があります。もちろん食べ過ぎには注意ですが、健康的な食生活に大切なのは「ご飯を制限すること」ではなく、「ご飯をどう食べるか」なのです。


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TOMOKAZU

お米マイスター、農産物検査員、農業用ドローンオペレーター。 お米のプロとして、お客様にとって有益なお米情報を発信しています。

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