先日、JA全農公式Twitterで「炊いたご飯の冷蔵禁止令」が発出されました。
昔から、ご飯は炊いた後にラップにくるんで『冷凍保存』が定説ですが、JA全農さんが(攻めた)『冷蔵』禁止令を発出したことで、炊いたご飯の保存法が再注目されているようです。
JA全農さんは、「冷蔵では無く、冷凍保存するように」とおっしゃっています。
その理由について、お米マイスターが少し掘り下げて解説しますね。
お米のデンプン質の変化について
お米のデンプン質には、「アミロース」と、アミロースのところどころから分子が枝状に分かれてできた「アミロペクチン」とがあり、お米はこれらβ(ベータ)デンプンが固く結合してできています。生米が固くて人間の口に合わないのは、デンプン質がβデンプンであるためです。
お米を美味しくいただくには、水を入れて「炊飯」しますよね。この「炊飯」によってお米のデンプン質を変化させ、食べられる状態にするのです。
炊飯による「加水」と「加熱」によって、次第にβデンプンのアミロース、アミロペクチンの結合鎖が崩れていきます。この時、その隙間に水の分子が入り込みながら加熱され膨張し、α(アルファ)デンプンに変化します。これを糊化(こか)もしくは、α(アルファ)化と呼びます。
この変化後のαデンプンは、粘りがあり柔らかく、いわゆる人が美味しくいただける「ご飯」の状態です。
ちなみに、炊飯前の生米は「お米」ですが、炊飯後には「ご飯」と呼び名が変わります。
炊飯後のご飯について
さて、α化したご飯。放置しておくと何が起こるかと言うと。。
放冷により、水分を含んだ湯気が空気中に放出され、「老化」と呼ばれる現象が起こります。α化で抱え込んでいた水がどんどん抜けていき、デンプンの元の構造に近いβ’(βダッシュ)という構造になっていきます(β化)。
これはご飯に限らずパンなど全てのデンプン食品でも同じです。老化が進むと、固くなり食感と風味が落ちてしまいます。
一度β化してしまったデンプン質を再加熱すると、再度α化が進みますが、このような過度な分子構造の変化を繰り返すと、どうしても食品の「劣化」を引き起こしてしまいます。
炊いたご飯の正しい保存方法
さぁ、JA全農さんの「炊いたご飯の冷蔵禁止令」に話しを戻しましょう。
勘のいい読者の皆さまはお気づきでしょうが、これはデンプンのβ化を避けなさい!ということ。
に加えて、やはり衛生面の問題もあるでしょう。
(冷蔵保存をする場合は、2、3日以内に食べきるようにしてください。)
では、冷凍保存はなぜ良いか?ですね。
冷凍すると、α化してデンプン質の間に入り込んだ水分を保持したまま、水分ごと凍らせることができるからです。
同時に衛生問題の発生リスクも冷蔵に比べて圧倒的に少ないです。冷凍保存の場合は、約1ヶ月保存が可能です。
ですが、ココで注意!
放冷しすぎてβ化が進んでしまったご飯を冷凍しても、折角の冷凍保存の恩恵を受けにくいということ!
冷凍保存する際は、必ず湯気の立っているうちにラップで密封することが肝心です。
これにより水分の蒸発を防ぎ、αデンプンの状態を保てます。
その状態で粗熱を取り、できれば早く冷凍が進むようにアルミのバットなど金属製のトレーに載せて冷凍庫へ。これが「炊いたご飯の正しい保存方法」です。
先人の知恵で、炊いたご飯は冷凍保存するように言われてきたと思いますが、今回はその真相についてお米マイスターがお教えいたしました。参考になりましたでしょうか?
コンビニのおにぎりは何故パサパサじゃないの?
少し小話を。
コンビニで売っているおにぎり。冷蔵ショーケースに入っているのに、温めないでも食べるときはパサパサしていません。
(沖縄はコンビニおにぎりを温める文化があります笑 これも下で考察してみますね)
一方、自分でおにぎりを作って冷蔵庫に入れておいたとき、レンジで温め直さないで食べたことありますでしょうか?
固くてパサパサして、食べられたものじゃありませんよね笑
これは、β化が最も進行する温度が0℃~4℃で、冷蔵庫がちょうどその温度帯であるためです。
試しにコンビニおにぎりを冷蔵庫で保存してみてください。温めなければパサパサで食べられたものじゃありません。
炊いたご飯をラップにくるんで金属製のトレーに置いて冷凍庫に入れる理由は、このβ化が最も進行する温度帯0℃~4℃をできるだけ素早く通過させるためです。
では、なぜコンビニで売られている冷蔵ショーケースのおにぎりは温めないでも食べられるのか?
実は、コンビニおにぎりが置かれている冷蔵ショーケースは、「冷蔵」ではないのです!
ビックリされた方も多いと思いますが、コンビニのおにぎりショーケースの設定温度は、14℃~20℃くらいに設定されています。これはもう「常温」ですね。
包装によって水分の蒸発が防がれ、β化も進んでいないため、温めなくても美味しく食べられるわけです。
沖縄のコンビニおにぎりはなぜ温める?
こちらも小話。
沖縄では、コンビニでおにぎりを買うと、店員さんに「おにぎり温めますか?」と聞かれます。
観光で沖縄にいらっしゃった時に、コンビニ店員さんからこう聞かれ、えっと驚いた方も多いでしょう。沖縄ではなぜ、おにぎりを温めるのか。
これについて考察してみます。
沖縄ではその昔、冷蔵保存の文化が無かった
亜熱帯気候の沖縄は、冷蔵庫が普及する前までは、外気温が10℃を下回ることが年間を通してほとんど無いため、「冷蔵保存」という文化がありませんでした。
そのため、調理してから時間が経ってしまった口に入れるものは、火を入れ直す、油で揚げ直すなどして食べていたそうです。
年配の人は、今でも「シーレてる(ちょっと腐りかけてる)から、コンロでアチラしてから噛んだら大丈夫よ(火入れしてから食べたらOKだよ)」と言います笑
なので、コンビニおにぎりも火入れの意味で温め直す説。
ポーク玉子という惣菜おにぎりの存在
沖縄では、「ポーク玉子おにぎり」という、焼いたポーク(スパム)をご飯でサンドした『おにぎらず』商品が昔からコンビニで売られています。
このポーク玉子おにぎりは、惣菜おにぎりというジャンルになり、絶対的に温めた方が美味しいのです。
この温める文化のポーク玉子おにぎりの存在が、普通のコンビニおにぎりを温めることにも繋がっていったという説。
そもそも食べ物は温かい方が美味い
沖縄では、アチコーコー文化というものがあります。アチコーコーとは、出来たてホカホカの状態のこと。
「はい、アチコーコーのうちに噛みなさい(温かい内に食べなさい)」と言われるし、できたて温かい食事にありがたみを覚える文化があります。
冷えてしまったご飯は、「ひじゅるーご飯」と言い、敬遠される傾向があるのです。アチコーコー文化=コンビニおにぎり温める 説。
そもそもおにぎりに美味しいお米を使えなかった
昔は、沖縄では美味しいお米がなかなか採れませんでした。美味しいお米は冷めても美味しい。
逆に品質が悪いお米は、冷えるとダイレクトに味が落ちてしまいます。そういったことも影響していたかも知れない 説。笑
沖縄の人がコンビニおにぎりを温めるのは、このような沖縄独特の文化が影響していることはおそらく間違いないと思います。
今回は、小話含めてだいぶ長文のコラムになってしまいました。ここまで読んでいただきありがとうございます。
最期に、炊いたご飯の正しい保存方法をまとめます。
① 炊いたご飯は、できるだけ早めに食べる!
② 残ってしまったご飯は、温かいうちにラップで密封する
③ 粗熱が取れた②を金属製のトレーの上に置き、冷凍庫で保存
正しいご飯の保存方法をマスターして、素敵なご飯ライフをお送りください。
それではまた!
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